鳥山明さんを悼む「ドラゴンボールと成長」ジャンプ印刷工場長 - nhk.or.jp

「もっとお手伝いしたかった、寂しい･･･」

2024年03月13日

「悟空が毎週、強くなるように、ジャンプも印刷工場も成長していった時代だった」

週刊少年ジャンプの印刷を請け負う茨城・五霞町の工場長は、連載当時の熱気をこう振り返り、今月亡くなった鳥山明さんへの思いを語りました。
（NHK水戸放送局記者戸叶直宏）

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いば６：配信期限 :3/20(水) 午後7:00 まで

ジャンプが売れすぎて印刷工場新設

「DRAGON　BALL」が全盛でほかにも人気漫画が複数掲載され「週刊少年ジャンプ」の部数が伸び続けた1990年ごろ、印刷を請け負う共同印刷は、複数の工場にまたがっていた生産が追いつかなくなってきました。
そこで圏央道が近く、約2万4000坪の土地がある茨城・五霞町に新たな印刷・製本工場を1993年に竣工しました。

今も、全国で販売される「週刊少年ジャンプ」の印刷を、五霞工場で一手に引き受けています。
工場では、来週発売される雑誌の印刷と製本の作業が山場を迎えていて、輪転機が大きな音を立てていました。

工場長「ジャンプと知らず入社」

現在、五霞工場の工場長を務める雨宮弘明さんは、93年に入社してまもなく五霞工場に配属され、社歴の半分の15年ほど勤務してきました。

雨宮さんは小学生のころから週刊少年ジャンプを愛読し「Dr.スランプ」を読んで衝撃を受けたということですが、工場に配属されるまで、ジャンプを印刷している会社とは知らなかったといいます。

雨宮弘明　工場長
「Dr.スランプ」の目新しい絵柄や未来的な乗り物に衝撃を受けて以来、鳥山明さんのファンでした。大学で印刷を学び、卒業後に共同印刷に入社し五霞工場に配属されましたが、そこで始めて、この会社が少年ジャンプを印刷していると知ったんです。衝撃を受けました。

「悟空のようにジャンプも工場も成長」

工場が稼働して1年ほどたった94年の年末には1週で653万部が発行され、週刊少年ジャンプの歴代最多を記録しました。

当時の五霞工場は、昼夜問わず24時間フル稼働で少年ジャンプを印刷していたといいます。3組のシフトで、昼・夜・休みを12時間交代で回し続けていたということで、苦しくも充実した日々だったといいます。

雨宮弘明　工場長
ドラゴンボールの孫悟空が毎週のように強くなるのと一緒に、少年ジャンプの発行部数もどんどん増えて、それにリンクするように私たちの印刷工場も技術をつけて一緒になって成長して大きくなっていった時代で、どんどん世の中の人に見てもらおうという気持ちでした。
本屋に行って、近所の子どもがジャンプのドラゴンボールを開いていると、「今週は俺が担当したんだぞ」と満足したり、「よし、次はもっときれいに作ってやろう」と反省したり･･･。
当時、世界一の発行部数といわれた雑誌に携われたことは誇りに思っています。

「検査で最新号のドラゴンボールを楽しむ同僚も･･･」

当時のこぼれ話を披露してもらいました。
雨宮さんの記憶では、当時は「ジャンプ」が発売される2週間ほど前に印刷が始まり、「DRAGON　BALL」の印刷をめぐり、毎週のように誰が担当するか取り合いになっていたということです。
また、工場では担当者が、印刷されたページのインクの色合いやにじみがないかを丹念にチェックするということですが、検査を、ひそかに楽しみにしていた社員もいたのではないか･･･ということです。

雨宮弘明　工場長
ドラゴンボールの印刷の担当につくと同僚から羨ましがられたり、「俺に代われよ」なんて言われたりして、みんなで取り合っていました。印刷の後は検査があり、ペンでチェックを入れながら色合いや文字などに問題が無いか確認していくのですが、妙に時間がかかっているやつがいるなと思ったらドラゴンボールのページで、どうみても熟読しているとしか思えない社員もいました。私もその1人です（笑）

「もう少し、鳥山先生のお手伝いをしたかった･･･」

先週、鳥山明さんの訃報をニュースで知った雨宮さん。最初は信じられない思いでしたが、その後に感じたのは「もう鳥山先生の新作をお手伝いできないんだ」という寂しさだったといいます。

雨宮弘明　工場長
この「SAND　LAND」のような作品をこれからも作れると信じて疑わなかったので･･･。正直言うと、もう少し鳥山先生のお手伝いがしたかったので、寂しいという気持ちが強いです。日本だけでなく世界の子どもたちに大きな影響を与えた偉大な先生。新しい作品はもう見ることができませんが、鳥山先生が描いた夢を、私たちが印刷して形にし、子どもたちに届けていく、ということにはまだまだ携われるので、頑張っていきたいです。

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